ただいま寄り道中

カチン・ミッチーナの備忘録

国レベルの政治対話が始まる:カレン、パオ国民議会と連邦主義の難問」(2017/01/25付Kachinland Newsより)

こんにちは、おこめです。ミッチーナではこの時期、ジャーマンフラワーとカチンの人々が呼ぶ、紫色の花が至る所に咲いています!とてもキレイなこの花は名前の通り第二次世界大戦中にドイツ人が持ってきた花だとか。薬にもなるそうです。 

 

今回の記事の本題は、ややお堅めの話題。
カチンランドニュース(Kachinland News以下KLN)*1から、ミャンマーという国家がどうあるべきか、どうあればより良いのかについて考えさせられた記事の紹介をしたいと思います。
 

NATIONAL-LEVEL POLITICAL DIALOGUE BEGINS: Forum of Karen, Pa-O nationals and federalism conundrum

国レベルの政治対話が始まる:カレン、パオ国民議会と連邦主義の難問
http://kachinlandnews.com/?p=27466

記事のポイント
・1月18日から20日の間にカレンで行われた国レベルでの政治的対話会議では、連邦主義について集中的に議論が行われた
・同じころ(1月19日)チー国務次官補が「和平プロセスの方針と経過」というセミナーで、長引く民族紛争を終結させる方法はパンロン会議において連邦制国家に関することを含めた政治的対話することであると述べた。
・カレンが提案する連邦制国家の在り方は、
①カチン、シャン、カヤ、モン、アラケン、チンなどは「州(nationaliy state)」 をもつ。
ビルマもまた「ビルマ州」をつくることで、政治的優位性をもたず、すべての州と平等な地位とする。
③先に挙げた民族以外には「国家地域(nationaliy areas)」を持ち自治権を与える。各民族が各々で州として独立し、連邦制国家を樹立する。

私的感想
この話を理解するには、まず「連邦制」とは何か、パンロン会議とは何かを理解しておく必要があるかと思います。
連邦制は、アメリカとかドイツとかが採用している統治システムです。詳しくはググってくださいな。

パンロン会議については、

こちらのページにまとめられています。

1947年にアウンサン将軍と辺境少数民族の間で結ばれた「少数民族自治権」と「英領ビルマ全域の連邦国家として独立」という合意を、今再び実現しようとする動きに関する内容が記事の中心です。
また、さらに進んで少数民族のなかでも数や地域が少ない少数民族は、「州」ではなく「地域」を占有し自治をしてもらおうという考えも述べられています。

国家の在り方を考えて、こういう国にしたい、ああいう国にしたいという議論が活発なのは素直に羨ましいと思ってしまいました。
もちろん、現状に多くの不備や問題を抱えるからこそなんでしょうが。
連邦制を議論するにしろ、民主化を進めるにしろ、まず国家とは何か、民主主義とは何か、ということを国民一人一人が学ぶ環境づくりが必要になってくると思います。そこがしっかりしていなければ、いくら形式的に連邦制をとってもすぐに上手く回らなくなってしまうでしょう。
また、高度な自治をもった州がなぜ纏まりをもって国家として同じ船に乗っていなければならないのか、共通の価値観や共同体意識をどうやって構築するのかという点も興味深いです。
そもそも、連邦制ということをどの程度の人が求めているのかも気になりますね。エリートだけの議論になってしまっている可能性もありますし。

しかし、元記事の最後にもあるように、今は「北部の戦闘をとめること」こそが最優先課題。2011年から5年以上続く戦いに終止符うって初めて、国家のグランドデザインを話し合うことができると思います。

*1:KLNはミャンマー・カチン州に拠点を置く非営利メディア。主に、カチン州での内戦に関する記事などを掲載。公式ページ:http://kachinlandnews.com

ミッチーナのマーケットをプラプラ散策してみる

こんにちは、おこめです。今回はミッチーナ最大のマーケットをご紹介します。ミッチーナにきて、何か買い物をしたいときはここへ行けば基本的なものは揃えることが出来るかと。
 
ミッチーナ駅から川のほうに向かって歩いていけば、ものの数分でマーケットに到着。食料品から日用雑貨、はては高価な宝石までなんでもあります。

f:id:okome2016:20170127114527j:plain

グーグル地図では、City Development Market(以下CDM)とBazzarと分けられているのですが、どちらも品ぞろえ的には同じような感じです。川沿いには生鮮食品や生花などを扱うエリアもあります
国際色も豊かで、ターバンをまいたおじさんが店番をするインド系のお店、漢字でかかれた看板を掲げる中華系のお店などもあります。
 
マーケット内はそれぞれお店がひしめきあうように並んでいます。基本的には、特定の種類のものを取り扱う専売形態のお店がほとんど。また、取り扱う商品が同じ店舗が隣接しています。
 

f:id:okome2016:20170127114653j:plain

民族衣装とその素材となる布を扱うお店。基本はここで布を買って、裁縫の専門店にいってロンジーにしてもらうことが多いです。

f:id:okome2016:20170127114713j:plain

布5000Ks~
裁縫1000Ks~
 

f:id:okome2016:20170127114740j:plain

女性向けのシャンプーやボディークリームなどを扱うお店。ニベア・ジョンソンエンドジョンソンなどの他、韓国製・中国製の商品が多くあります。
 

f:id:okome2016:20170127114758j:plain

竹籠屋
 

f:id:okome2016:20170127114818j:plain

布団屋
 
マーケット内で歩き疲れたら、軽食なんかも売っているので一休みがてら食べてみるのもいいかもしれません。

f:id:okome2016:20170127114842j:plain

私はCDM内で売られているこちらのデザートが好きでよく行ったら必ず食べています。ただ、氷を使用してたり、手の上でスライスしてたりなど衛生的には…なのでそこは自己判断でお願いします。(一杯500Ks)
 

f:id:okome2016:20170127114920j:plain

生鮮食品エリアは、より一層カオスな感じです。ちょっと入ってみたんですが、生臭いにおいや、よくわからん匂いが漂っているため気分が悪くなり奥に進むことを断念。
でも、せっかくなので立ち寄ってフルーツあたりでも買ってみてください!
 
ミッチーナマーケットは、所狭しと並ぶ様々な商品を眺めているだけでも暇つぶしにはもってこいですし、現地の人たちの生活を垣間見れるところですのでぜひとも訪れてみてください!

少数民族州における戦争:タマドー(ビルマ国軍)は正当な戦争を行っているか?(Kachiland Newsより)

こんにちは、おこめです。ミッチーナは日中はだいぶ暖かくなってきました!
今日はややお堅めの話題。
カチンランドニュース(Kachinland News以下KLN)*1から、カチンとミャンマー民主化について考えさせられた記事の紹介をしたいと思います。
 
WAR IN ETHNIC STATES: Is the Tatmadaw waging a just war?
少数民族州における戦争:タマドー(ビルマ国軍)は正当な戦争を行っているか?」
 
記事のポイント
  • ビルマ国軍によるシャン州北部及びカチン州における戦闘行為の正当化について論ずる。
  • ビルマ国軍は北部-ビルマ同盟(NA-B)と呼ばれる、民主同盟軍(MNDAA)・タラン国民解放軍(TNLA)・アラカン軍(AA) を一方的にテロリストと断定し、その殲滅のために戦っていると述べている。
  • NLD(国民民主連盟)はすべてのEAO(少数民族武装組織)と平和的交渉による和解を目指しているのに対して、ビルマ国軍は北部―ビルマ同盟(NAーB)を除外している。
  • ビルマ国軍は正しい戦争を命じたり命じる権限はない。国軍が平和的プロセスではなく戦争選ぶのは政治的利益のためである。
  • ビルマ国軍は公正な戦争の基準(比例性・非戦闘員を避けること・特定兵器の使用回避)を満たしていない。
 
アウンサンスーチー氏率いるNLDが与党になってから戦闘がより悪化したと考えるカチン人は、私の周囲に限ったことですが少なくありません。
NLDの立場は民族紛争の平和的解決であるのに、なぜ紛争が悪化しているんかな?と考えていたのですが、この記事を読んで思ったのは、NLD政権下で国軍が自らの地位の不安定化を恐れ、国軍の存在価値の誇示しようとした結果、紛争を激化させたのではないかということ。
 
例えば、NLDが政権を取り民主化に歩み始めたということは、それまで国軍が独占的にしめていた地位や利益が圧迫されることに他ならず、国軍に割り振られる予算そのものが削られ、地位に付随していた既得権益も失いかねないということ。
また、国民主権の国家となれば、国軍はその存在の意義や価値を国民に分かりやすく示さねばならなくなります。そうなると、一番簡単な方法は、国民の平穏を脅かす”かもしれない”敵をつくることなのではないでしょうか。
それが他国内(或いは他国そのもの)であろうと自国内であろうと、とにかく「戦うべき敵が確かに居る」ということが国軍にとっては重要な意味を持つのではということです。
 
この時点で、国軍が想定している国民というのがどこまでも「ビルマ人」となっていること、これこそがミャンマーの国内紛争の根本的問題であると思います。国軍への不満が、次第にビルマ人そのものへの不満へと変わってしまってはそれこそ紛争解決は難しくなるでしょう。
あるカチン人の知り合いの「結局、政府はビルマ人のための政府なんだ」という言葉からにじみ出るのは、政府批判だけではなく、ビルマ人そのものへの批判です。(その時、こうして民族同士でいがみ合い始めたらそれこそ国軍中枢部の思うツボになってしまうよ、と喉から出かけて飲みこんだ。)
 
私は、ミャンマー民主化は紆余曲折を経ながらも少しずつ前進していくと思っています。一方で、国軍をうまくコントロールすることが出来ない限り、民主化プロセスの進展によって紛争がより長期化・激化する可能性があるとも考えています。今後、NLDはその点にもっと積極的かつしたたかに対応することを期待します。
 
当事者ではない私たちも、ミャンマー民主化の光の部分に焦点をあてるだけでなく、副作用のように起こる影の部分も注視していかねばならない。そう考えさせられる記事でした。
 

*1:KLNはミャンマー・カチン州に拠点を置く非営利メディア。主に、カチン州での内戦に関する記事などを掲載。公式ページ:http://kachinlandnews.com