少数民族州における戦争:タマドー(ビルマ国軍)は正当な戦争を行っているか?(Kachiland Newsより)
こんにちは、おこめです。ミッチーナは日中はだいぶ暖かくなってきました!
今日はややお堅めの話題。
WAR IN ETHNIC STATES: Is the Tatmadaw waging a just war?
http://kachinlandnews.com/?p=27442 (2017/01/18付)
記事のポイント
- ビルマ国軍によるシャン州北部及びカチン州における戦闘行為の正当化について論ずる。
- ビルマ国軍は北部-ビルマ同盟(NA-B)と呼ばれる、民主同盟軍(MNDAA)・タラン国民解放軍(TNLA)・アラカン軍(AA) を一方的にテロリストと断定し、その殲滅のために戦っていると述べている。
- NLD(国民民主連盟)はすべてのEAO(少数民族武装組織)と平和的交渉による和解を目指しているのに対して、ビルマ国軍は北部―ビルマ同盟(NAーB)を除外している。
- ビルマ国軍は正しい戦争を命じたり命じる権限はない。国軍が平和的プロセスではなく戦争選ぶのは政治的利益のためである。
- ビルマ国軍は公正な戦争の基準(比例性・非戦闘員を避けること・特定兵器の使用回避)を満たしていない。
アウンサンスーチー氏率いるNLDが与党になってから戦闘がより悪化したと考えるカチン人は、私の周囲に限ったことですが少なくありません。
NLDの立場は民族紛争の平和的解決であるのに、なぜ紛争が悪化しているんかな?と考えていたのですが、この記事を読んで思ったのは、NLD政権下で国軍が自らの地位の不安定化を恐れ、国軍の存在価値の誇示しようとした結果、紛争を激化させたのではないかということ。
例えば、NLDが政権を取り民主化に歩み始めたということは、それまで国軍が独占的にしめていた地位や利益が圧迫されることに他ならず、国軍に割り振られる予算そのものが削られ、地位に付随していた既得権益も失いかねないということ。
また、国民主権の国家となれば、国軍はその存在の意義や価値を国民に分かりやすく示さねばならなくなります。そうなると、一番簡単な方法は、国民の平穏を脅かす”かもしれない”敵をつくることなのではないでしょうか。
それが他国内(或いは他国そのもの)であろうと自国内であろうと、とにかく「戦うべき敵が確かに居る」ということが国軍にとっては重要な意味を持つのではということです。
この時点で、国軍が想定している国民というのがどこまでも「ビルマ人」となっていること、これこそがミャンマーの国内紛争の根本的問題であると思います。国軍への不満が、次第にビルマ人そのものへの不満へと変わってしまってはそれこそ紛争解決は難しくなるでしょう。
あるカチン人の知り合いの「結局、政府はビルマ人のための政府なんだ」という言葉からにじみ出るのは、政府批判だけではなく、ビルマ人そのものへの批判です。(その時、こうして民族同士でいがみ合い始めたらそれこそ国軍中枢部の思うツボになってしまうよ、と喉から出かけて飲みこんだ。)
私は、ミャンマー民主化は紆余曲折を経ながらも少しずつ前進していくと思っています。一方で、国軍をうまくコントロールすることが出来ない限り、民主化プロセスの進展によって紛争がより長期化・激化する可能性があるとも考えています。今後、NLDはその点にもっと積極的かつしたたかに対応することを期待します。
*1:KLNはミャンマー・カチン州に拠点を置く非営利メディア。主に、カチン州での内戦に関する記事などを掲載。公式ページ:http://kachinlandnews.com