ただいま寄り道中

カチン・ミッチーナの備忘録

56年目となった「カチン革命記念日(Kachin Revolution Day)」(Kachinland Newsより)

こんにちは、おこめです。ミッチーナは暑期に向けて日増しに日差しが強くなっている今日この頃です。昼間であれば、水シャワーもへっちゃらです!
さて、今日はカチンランドニュースから「56年目のカチン革命記念日」について。ちなみに、記事のポイントの内容は、おこめの独断と偏見に基づいていますので、原文を閲覧されることを強く推奨します。
 

(Kachinland News:2017/02/05付)

 

記事ポイント
・KIAカチン独立軍が成立し、今年で56年目を迎え世界中のカチンコミュニティで記念の式が行われた。*1
・1947年2月12日、アウンサン将軍の呼びかけに応じ、パンロン(Panglong)協定に署名した。しかし1950年代ビルマ政府の先導による反ファシスト人民自由同盟が、パンロン協定を無視して少数民族の文化や宗教的伝統を抑圧するようになった。
ビルマ政府やビルマ人がカチン人を自分たちよりも下位の民族だとみなし、カチンを植民地化していると感じたラングーン大学のカチン人学生らによって、 1957年にKIOの前身となる組織を編成した。
 
記事ポイント
KIOのラニョ・ゾォン・ラ(Lanyaw Zawng Hra)会長が正解中のカチン人に向けて次のようなメッセージを送った。
・カチン・コミュニティのさらなる団結。
・IDPへの支援への感謝と継続支援への祈り
・KIO/KIAで働く人へのねぎらい。
・麻薬取り締まりの強化。薬事業に従事するカチン・コミュニティの敵である
ビルマ政府による少数民族支配体制への批判
 
 
私的感想
カチンが独立に向けて(或いは自治権の獲得)に向けて、半世紀以上がたっているのかと思うと、民族紛争というものの解決の難しさに気分が沈んでしまう。
紛争はいつ終わるのだろうか?KIO/KIAが諦めるとは思えないし、ビルマ政府が歩み寄るのが現実路線だとは思うが実際にそれは可能なのだろうか。
民主化が進むことで、かえって多数派のビルマ人の言い分が正当性をもって通ってしまうのではないかと思う。(民主的な選挙の結果、多数派の意見が通るのはひどく真っ当だ)。
もちろん、今の軍事政権では何も変わらないし、民主化した方がまだマシとは思う。でも、国際社会が期待をかけるほどには、当のカチン人は民主化への希望が薄れているように思う。
もう一つ、麻薬についての言及があるのが興味深い。アヘン栽培などには裏に大きな利権が絡んでいて、それがコミュニティを破壊しかねない勢いで増殖しているということなのだろうか。地元に恩恵以上の災厄をもたらす麻薬そのもの批判であり、一部利己主義・経済至上主義に走るカチン人を戒めているようにも思う。
森林伐採と同じく中国が一枚かんでお金を動かしているのは間違いないだろうし、貧困というか、絶望・不安・焦燥感と麻薬はいとも容易く結びついてしまうのだ。
 
カチン独立革命記念日が現在進行形の革命を指すものではなくなる日がいつの日か来ることを願うとともに、より多くの人にこの問題を知ってもらうために発信していこうと思う。

*1:1960年10月25日シャン州北部のラショー(Lashio)にてKIO(カチン独立機構)が結成され、翌年2月5日にKIAが成立。

失われた英雄コー・ニー氏を讃えて (2017/01/31付Kachinland Newsより)

こんにちは、おこめです。ミッチーナはここ2,3日は夜になると雨が降っています!いよいよ暑期が近づいているということでしょうか?
今日は、1月29日にヤンゴンで暗殺されたNLD法律顧問コー・ニー(U.Ko.Ni)氏の話題。
カチンランドニュース(Kachinland News以下KLN)*1から、コー・ニー氏の業績などをご紹介しつつ私的乾燥を。
 
In Praise Of The Fallen Hero U Ko Ni: The lawyer with a vision
 
記事のポイント
・コー・ニー氏は2008年の憲法のに大きく貢献した
・2013年以降もコー・ニー氏は憲法改正への活動を展開している。現在、NLDが議会を統制しているにも関わらずいまだに議席数の25%が軍人によって占められていることは、真の民主主義と連邦制の妨げになると発言している。
・現行憲法は次の2つの点で民主的でないとコー・ニー氏は述べていた。第一に憲法改正に国民の希望と参加が反映されない状態であること。第二に、国権が国民にあるとしながらも、憲法改正国連総会代表者の75%以上の賛成が必要であるほか、各州の首相は大統領によって任命され、州政府は内務省によって運営されていること等。
・2016年4月、コー・ニー氏はミャンマータイムズの取材に対して、現行憲法の改正が軍によって阻まれ難しい以上新憲法を作成し制定する道をNLDが歩むと述べていた
 
私的感想
Kachinland Newsの記事作成者は、自らが「コー・ニー氏の熱心な支持者」であると前置きし、その業績について述べている。
注目すべきはやはり現行憲法への批判と新憲法制定に尽力していた人物であったということ。軍部を中心とした既得権益を持つ人から厄介者扱いを受けていてもおかしくない。
民主化に対して熱心であったことはもちろん、連邦制に対しても一定のビジョンを持っていたであろうことを思うと、カチン的にも彼の死が後々になって様々な影響が出そうな気がする。
 
民主化の進展に暗い影を落とすであろうこの事件。犯人が単独犯であるとは到底思えず、バックには過激な右派やそれらと通ずる軍部がいるのではないかと勘ぐってしまう。
軍部と政府との攻防は今後も続いていくだろうし、社会の変革期には様々なもめごとが起こっていくのは歴史の常ではあるけれど、それでも苦しむ人や命を落とする人が少なければ少ないほうがいいと思う。ミャンマーはまだ数か月しか暮らしていないし、ほとんどミッチーナにいるけど、カチン人もビルマ人も、シャン人やチン人も、今まで出会った人は皆おおらかで、本当にごく普通の人たちだった。
ビルマ軍だって大多数はそういった一般市民生まれから入隊しているわけで、一人一人みればわりと善良な人達なのだろう。それでも、敵を見たら戦うし時に殺しもする。それがとても悲しいと思う。
 
何にせよ事件の早期全容解明を願い、コー・ニー氏のご冥福をお祈りします。
 

*1:KLNはミャンマー・カチン州に拠点を置く非営利メディア。主に、カチン州での内戦に関する記事などを掲載。公式ページ:http://kachinlandnews.com

国レベルの政治対話が始まる:カレン、パオ国民議会と連邦主義の難問」(2017/01/25付Kachinland Newsより)

こんにちは、おこめです。ミッチーナではこの時期、ジャーマンフラワーとカチンの人々が呼ぶ、紫色の花が至る所に咲いています!とてもキレイなこの花は名前の通り第二次世界大戦中にドイツ人が持ってきた花だとか。薬にもなるそうです。 

 

今回の記事の本題は、ややお堅めの話題。
カチンランドニュース(Kachinland News以下KLN)*1から、ミャンマーという国家がどうあるべきか、どうあればより良いのかについて考えさせられた記事の紹介をしたいと思います。
 

NATIONAL-LEVEL POLITICAL DIALOGUE BEGINS: Forum of Karen, Pa-O nationals and federalism conundrum

国レベルの政治対話が始まる:カレン、パオ国民議会と連邦主義の難問
http://kachinlandnews.com/?p=27466

記事のポイント
・1月18日から20日の間にカレンで行われた国レベルでの政治的対話会議では、連邦主義について集中的に議論が行われた
・同じころ(1月19日)チー国務次官補が「和平プロセスの方針と経過」というセミナーで、長引く民族紛争を終結させる方法はパンロン会議において連邦制国家に関することを含めた政治的対話することであると述べた。
・カレンが提案する連邦制国家の在り方は、
①カチン、シャン、カヤ、モン、アラケン、チンなどは「州(nationaliy state)」 をもつ。
ビルマもまた「ビルマ州」をつくることで、政治的優位性をもたず、すべての州と平等な地位とする。
③先に挙げた民族以外には「国家地域(nationaliy areas)」を持ち自治権を与える。各民族が各々で州として独立し、連邦制国家を樹立する。

私的感想
この話を理解するには、まず「連邦制」とは何か、パンロン会議とは何かを理解しておく必要があるかと思います。
連邦制は、アメリカとかドイツとかが採用している統治システムです。詳しくはググってくださいな。

パンロン会議については、

こちらのページにまとめられています。

1947年にアウンサン将軍と辺境少数民族の間で結ばれた「少数民族自治権」と「英領ビルマ全域の連邦国家として独立」という合意を、今再び実現しようとする動きに関する内容が記事の中心です。
また、さらに進んで少数民族のなかでも数や地域が少ない少数民族は、「州」ではなく「地域」を占有し自治をしてもらおうという考えも述べられています。

国家の在り方を考えて、こういう国にしたい、ああいう国にしたいという議論が活発なのは素直に羨ましいと思ってしまいました。
もちろん、現状に多くの不備や問題を抱えるからこそなんでしょうが。
連邦制を議論するにしろ、民主化を進めるにしろ、まず国家とは何か、民主主義とは何か、ということを国民一人一人が学ぶ環境づくりが必要になってくると思います。そこがしっかりしていなければ、いくら形式的に連邦制をとってもすぐに上手く回らなくなってしまうでしょう。
また、高度な自治をもった州がなぜ纏まりをもって国家として同じ船に乗っていなければならないのか、共通の価値観や共同体意識をどうやって構築するのかという点も興味深いです。
そもそも、連邦制ということをどの程度の人が求めているのかも気になりますね。エリートだけの議論になってしまっている可能性もありますし。

しかし、元記事の最後にもあるように、今は「北部の戦闘をとめること」こそが最優先課題。2011年から5年以上続く戦いに終止符うって初めて、国家のグランドデザインを話し合うことができると思います。

*1:KLNはミャンマー・カチン州に拠点を置く非営利メディア。主に、カチン州での内戦に関する記事などを掲載。公式ページ:http://kachinlandnews.com